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一通り聞き終わったところで、質問をやめる。
「咲良……どうしたの?急に」
いつも無表情の葉月が眉間にしわを寄せている。
表情に変化があるのは珍しいので、何だかおかしくて、俺は小さく笑ってしまった。
「……何がおかしいの?」
「あ、ごめんごめん」
今度は怒るのかな?
今日はいろいろと発見がある日だ。
「本当は、別のこと聞きたいんだけどね」
一瞬、ほんの一瞬だけ、葉月の手を強く握り返す。
「でも話してくれないんだろ?」
「咲良……」
葉月の声が硬くなる。
少しやり過ぎたか。
「だから……もう聞かないよ」
強くした手を緩める。
もともと大きな目を葉月はさらに大きくした。
「最初はそれが聞きたくて関わったつもりだったけど……もったいないと思ってさ」
結局、あの変人主治医の言った通りになっているのがむかつくが、そう思ったものは仕方がない。
「それだけじゃなくても、お互いに聞けることまだたくさんあるだろ?」
踏み出してみよう。
葉月なら、大丈夫だって思いたい。
「葉月は俺を、俺は葉月を。せっかく出会ったなら、知らなきゃ損だろ」
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