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夏の夜は涼しい。
特にここの病院は森や林に囲まれているので、マイナスイオンで溢れているせいかとても気持ちがいい。
―――はずなのに。
「咲良~早く!!こっちだよ!!」
「分かったから……あんまり引っ張んなぁ!!」
腕がちぎれるとはこのことを言うんだろう。
こんな小さな手のどこにこれほど強い力があるのか。
「おそいよぉ~咲良君!!」
だいぶ先に行ったのか、遠くであのバカ主治医の声がする。
「分かったって!!今行く!!」
内心ちょっと苛つきながらも、子供達の手を引き急いだ。
「咲良……」
横にいる葉月が心配そうにこちらを見る。
「……大丈夫。たぶん」
汗だくだくの息切れ切れで、この台詞は全く説得力ない。
「咲良ぁ!!早く早く!!」
今さらながらやめておけば良かったと後悔した。
せっかくの休日がまさかこんなことになるなんて。
「はぁやぁく!!」
ぐいぐい子供達に引っ張られながら、俺はなんでこうなったか必死に思い出そうとしていた。
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