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「眩しー……」
目に飛び込んで離れない、透き通る青空。
「夏だなぁ……」
「夏だねぇ……」
そんな空を眺めながら、クーラーがきいた病院のロビーでアイスをくわえる。
「幸せだな。これは」
世間は夏休み真っ最中。
だが患者の俺にとっては毎年関係のない行事だ。
「葉月は夏休みなんだろ。どこか行ったりしないのか?」
「病院に来たいから……大丈夫」
「……そっか」
よくもまぁ、恥ずかしげもなく言えるな。
悪い気はしないが。
「宿題も終わったから、平気」
最近知った(というか聞いた)のは、葉月は実は俺よりも一つ下の高校生だということ。
学校に行っていれば俺も今頃高三のはずなので、葉月は高二ということになる。
「聞いてみるもんだな~まさか葉月が高校行ってるなんて」
「……どういう意味?」
「そのまんまの意味」
今までは聞こうとしなかっただけで、歩み寄ればこんなにも相手のことが分かる。
少し照れ臭くて、くすぐったい気分だ。
「お前平日も一日中病室にいたのにな。いつ学校行ってるんだ?」
「気が向いたら……行ってる」
葉月らしいといえばらしいが。
「単位とか…平気なのか?」
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