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「………」
答えないのが怖い。
まぁ葉月は成績良いらしいから、大丈夫ということにしておく。
「でも暇だなぁ。基本病院から出れないし」
「蛍祭りは特例だったみたいだしね」
あれから一度も病院から出ていない。
出かけるといえば、病院の前に広がる庭くらいだ。
「暇だなぁ……本当に」
去年まではこんなこと思わなかった。
暇でも何でも、誰かと会うくらいならましだと思っていた。
「なに?」
まさか隣にその誰かがいるなんて
「考えられなかったよなぁ……」
しわが寄っている葉月の眉間を、ぐいと押す。
「屋上でも行くか。いい天気だし」
「でも暑いし、体」
「大丈夫だって」
葉月の手を掴み、ソファーから立たせる。
「今日は風もあるし、影だってあるよ」
いつものように手を繋ぎ、屋上へ向かう。
時間なら有り余るほどあるから。
あの高い空を何にも捕らわれないで見ていられる。
「あ、弁当とか持ってく?」
仕方なさそうにため息をつく葉月を見ながら、俺達は歩いて行った。
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