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俺の心の支えとなっている少女は、昔からこうだった。
どんなにひねくれても、嘘で自分を塗り固めても、その防壁を容易くぶち破るんだ。
昔、死んだ心に水を与えてくれたのもフィアリア。
コイツは……、そうだな。
どことなく母さんに似てたんだ。
容姿とかじゃなく雰囲気が。
だから、小さい頃はフィアリアと母さんを重ねてたのかも。
よく考えたらめっちゃ最悪だなー、俺。
フィアリアをさっきより少し強く抱き締めた。
フィアリアが身を縮め、顔を真っ赤にしてるが我慢してもらおうか。
フィアリアの温もりが心地いい。
今はフィアリアには母さんの面影を見ずに、一人の女の子として認識してる。
好き――かは、やっぱりわからないけど。
大切=好きって言われたら確実に一番好き。つまり一番大切。
いつかこの気持ちは確かなものになるのかな?
フィアリアの胸辺りに顔を埋めるのをやめ、今度はフィアリアを自身の胸に引き寄せた。
基本コイツは甘えん坊だから……、喜ぶだろ。
案の定、気持ち良さそうに抱き着いてくる。
自然に頬が緩み、月の光に煌めいている銀を撫でた。
その光にふと顔を上げる。
あの日から辛い日を思い出すきっかけとなり、俺を苦しめてきた満月。
俺は満月が嫌いだ。
――でもこの時だけは、満月の光が優しく、祝福するように俺達を包んでくれてるような気がした。
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