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とある城の一室。
床には赤い絨毯が玉座に向けて道をつくり、それに沿うように燭台が等間隔で並んでいた。
しかし、その金の装飾が施された玉座は無人。
巨大な部屋の左側にある、城下の街を一望出来るこれまた大きな窓に二つの人影があった。
「父上、レクサスのクローンと接触しました」
「そうか……」
口を開いた銀髪の青年ゼノンは、窓を眺める人物の背に向かいひざまづいている。
「そしてお前は見事に敗北したと」
「……すみません」
「気にするな。別に咎めようというわけではない。
あの召喚師もいたというのなら仕方ないことだ」
ゼノンは床に向けていた視線を、窓を眺める人物即ち剣王に向けた。
「本当にレクサスそっくりでした。
あれが偽物だなんてとても……」
「虚言だな。お前も弟の遺体は見ただろう?」
「そうですが……」
「迷いの剣では何も断ち切れん。
わかったな?」
「……はい。失礼します」
剣王の有無を言わせぬ声色にゼノンは頷くしかなかった。
実際、剣王の言うことは正論だと思った。
あのブラッククロウを受けると同時に、一撃与えることは不可能ではなかったが、自分にはそれが出来なかったのだから。
(次は……、必ず。
レクサス、母さん、俺は願いを果たすよ)
ゼノンは静かにその場を去った。
――――――。
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