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「美郷、おまたせ!疲れたぁ~」
制服に着替えて戻ってきた航多は、爽やかそのもので、とても部活の後とは思えない。
私たちは並んで教室を出た。
その時、
「航多センパイー!あの…」
前から2人組の女の子がやってきた。
「あ、お疲れさま。どうしたの?」
マネージャーなのかな。
彼女たちは隣にいる私にチラっと目線を向けたけど、すぐに航多を見上げる。
「センパイ、この後皆でご飯食べに行きませんか?」
「他の先輩方も行かれるそうですよ」
2人は口々に話しながら、航多の腕をとる。
「あ…ごめん。今日はちょっと…」
航多が断ろうとすると、明らかに不機嫌そうな表情になった。
「えー、センパイ来ないとつまんないですー」
「そうですよー。みんな航多センパイ待ってますよー」
「うん、でも俺、彼女待たせてるから。今日はやっぱり無理かな。ごめんね」
航多は、そう言って顔の前に手を合わせて謝ると「行こう」と私を促した。
なおも不機嫌そうな彼女たちに軽く頭を下げて航多についていく。
彼女たちの視線を背中にひしひしと感じて、怖くて振り向けなかった。
「彼女って…」
「えー…まさかぁ…」
小声で話す声が聞こえた。
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