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初めて手をつないだあの日から、一緒に帰る日は手を繋ぐようになった。
そして、別れ際のキスも。
航多と帰る日は、部活の後で遅い時間。そのおかげで他の生徒に見られる心配がなくて、私は安心して手を繋ぐことができた。
そんなある日。
いつものように、航多と帰っていると
「美郷、今日新しいスパイク見たいんだ。買い物付き合って」
というわけで、電車に乗って都心に寄ることにした。
駅には、うちの制服を来た生徒がチラホラ見える。
私は思わずうつむいた。
そして、慌てて繋いでいた手をほどく。
「美郷?」
航多の怪訝な顔。
「ごめん!メールが…」
私は、携帯を取り出してボタンを適当に押した。
本当はメールなんて、来てないのに…。
ちょうど電車が到着し、見たフリをして携帯をしまうとそのまま車内に乗り込んだ。
助かった…。
うまく、誤魔化せたかな…。
ちらっと航多の顔をうかがったけど、特に気にはしてないみたい。
ホッとした。
航多を傷つけたくはない。
車内はサラリーマンや、学生で混雑していた。
「美郷、大丈夫?」
航多が聞く。
私は背が低くて、吊り革に届かない。電車が揺れるたび、足元がふらついた。
「うん、なんとか大丈夫!」
笑って頷いた、その時、電車が急に速度を落とし、その揺れで人の波が押し寄せた。
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