『理科室』

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頭が…痛い 吐きそうだ。 嫌な臭い 酸っぱい…薬品の… ボンヤリと、周りの景色が、見えてきた 出来れば、どうせなら、いっその事、気を失ったままにして欲しかった。 カチャカチャと、金属の音が耳障りだ… 水の流れる音も… 体中に何か、液体を塗られた。 焼けただれるような痛みに、叫んだ。 と思った。 声が出ていない。 ヒューヒューと、風の音がするだけだ。 「声を上げられると、困るのでね。声帯を切り取らせて貰ったよ。」 目玉が飛び出る程見開いた。 大粒の涙が、流れた。 (お母さん!!兄ちゃん!!誰か!!助けて!!神様!!誰かぁ!!) 「君は、お兄さんがいるのか。卒業してたんだね。私は今年から来たからね。」 (こいつ!!心が…やっぱり心が読めるのか!!) 「あ、ああ。我々は普通なんだが、この時代の人類は、まだ野蛮な通信手段しか持たないんだったね。」 (何を言ってるんだ?我々って…この時代の…?) 「いや、理解などしなくていい。君が、未来の世界を救う事は事実だ。誇りに思うといい。」 体中に塗られた液体は、皮膚を溶かす為の物だったらしい。 まるで、標本のように、肉が露出された。 「さて、これからかなり痛いがね…死にはしないよ。いや、死ねないと言うべきか。」 人の事だと思って、何言ってんだ!! 殺人だ!! 地獄に落ちろ!! 「そうそう、その気の強さが、必要なんだよ。」 確認するようにうなづくと、メスで1cm間隔で、深さ2mmの穴を、手際良くサクサクと開けて行った。 「ふふ、いい声だ。」 やつには、耳が潰れる程の絶叫が、20分程聞こえたろう。 何故、気を失わないのか、鼻に挿し込まれたチューブからの、えたいの知れない、ガスのせいらしい。 全身を模様のように、切目を入れ終わった後、何かビンから取り出し、並べていた。 それを、指でつまむと、切り裂いた穴の中に、一つずつ押し込んでいった。 それは、動いていた。
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