『家庭科室』

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三学期も中場になってから、転校するなんて、うちの親は何も考えてくれてないな。 しかも、安くていい物件!!何て慌ててローンで購入。 何だよ、この閑な景色は… きっと、トトロが住んでるよ… ド田舎の学校は、一学年一学級。 前の学校は、6クラスあった。 卒業まで話すらしないヤツもいるだろう。 適当な位置に居たい俺は、心地良かった。 ところが、転校生の上に、ひとクラスだぁ? 気が重い何てもんじゃない。 見た目も、勉強も、スポーツも何もかもが『普通』 立候補したり、人前に出るのは面倒。 クラブも、帰宅部。 好きな子は居たが、彼女は居ない。 ま、クラスにいてもいなくても、ぃぃキャラだった。 仲のいい連れは、2人。 そのうちの一人が、お別れ会に泣いたのには、驚いた。 「日曜に、行くからよぉ!!地図書いてくれよぉ!!」 こんな熱いヤツだったか? 地図ったって、駅から一本道だし(笑) 何もないとこだから、って軽く断った。 俺にだって、ちょっとは見栄がある。 あんな取り残された田舎に行ったなんて、知られたくない。 コンビニもねぇ~♪ 何て歌があるらしい。 今時珍しい、地道をガタガタ軽トラを、走らせながら、親父が歌ってた。 高校になるまで、あと2ヶ月だけだ。 すぐに、抜け出せる。 この町(村?)には、高校はない。 一人暮らしかな? 少しの間、別荘に来たと思えばいい。 中学校が見えた。 小学校が隣にある。 と言うか、平屋の校舎が、並んでいるだけだ。 校門も一緒。 門柱に、消えかかった筆文字で、河原城中学校 河原城小学校 と並んで書かれている。 はぁ… 誰も居ない。 今日は、土曜だ。 俺だけ何か書類だの、聞きたいことがあるだのと、呼び出されたのだ。
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