『美術室』

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『美術室』

悪夢だな… 紗季は、真っ白なキャンバスを睨みつけて、後悔していた。 先輩と賭けなんかするんじゃなかった。 県のデザインコンクールで、最優秀賞を取った紗季に対する、嫌がらせだったのは、分かっていた。 誰もが、紗季の受賞に驚いた。 紗季自身もだ。 学校の名誉だ、とホクホク顔の校長を横に、顧問の重松先生すら、微妙な表情をしながら、表彰状を渡したのだ。 すぐに、クラブ内で噂が広まった。 何かの盗作だろう、と。 紗季は、それほど熱心な部員ではなかった。 コンクールだって、狙ってたわけではない。 いつでも、気分次第。 趣味なんだから。 そんな軽い気持ちだった。 だから、気分のまま、何となく描いた。 でも、今までになく、楽しかったな、と思った。 完成した作品は、抽象画だった。 テーマは『未来』 ありきたり~、と笑って、先生に睨まれたっけ。 未来…予言…予知…デジャウ゛…時間…無限…宇宙…闇…光… ぼんやり連想しながら、描きあげた。 ま、抽象画なんて、見る人の気まぐれで、どうとでも、解釈出来るし、逆さまに展示されてた、なんて話も聞いた事がある。 なんでアタシが、盗作までしてあんな、訳わかんないの描くのよ。 しかし、グランプリだ。 審査員に聞きたい位だっちゅうの。 先輩は、遅くまで毎日ここで、必死に描いてたよなぁ。 天国と地獄に分かれている道。 それを、不安そうに見つめる少女。 ぷっ。 分かりやす過ぎ! 画力は、プロ級なんだけど、イマイチ表現が稚拙だと思う。 その先輩が、昨日紗季を呼び出した。 ぃぃ話じゃない事は、予想がついた。 一応、しおらしい後輩を演じていたものの、話を聞いてるうちに、段々腹がたってきた。 「いいですよ。」 言ってしまった。
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