1人が本棚に入れています
本棚に追加
ある8月の夏の暑い日。
僕の息子が死んだ。
まだ小学生だった。
この子は今から楽しい事が沢山待っていただろう。
だけどこの子には、つらい事しかなかった。
当たり前なのだがこの子の親である僕はこのつらさを変わる事が出来なかった。
生まれた時から病気がちで学校にもあまり行けない日が多々あった。
そんな事が続いていた去年の12月に病院の医師からこう告げられた。
「息子さんの命は長くても3ヶ月位でしょう。」
ガンだと知らされた。
初めていい歳した大人が人前で泣いた。
悩んだ挙げ句息子にガンだと知らせ、あと3ヶ月位の命だという事も伝えた。
息子は小さく
「わかった」と言った。
それから仕事も辞め、できる限りこの子と一緒にいた。そして安定期に入り一時退院が出来るようになった。
久しぶりの我が家での家族の団らん。
僕が何したいと聞くと
「学校に行きたい」
次の日の朝、まだあまり汚れていないランドセルを背負って学校に行った。
「行ってきます~。」
あれから4ヶ月たったが息子は生きている。
だけど5月位からまた入退院を繰り返した。7月には個室に移され喋る事も困難になった。
そして8月
息子はみんなに見守られながら静かに息を引きとった。
慌ただしく葬式も終わり、息子の荷物を整理している途中に携帯電話と一通の手紙を見つけた。
携帯電話には息子の友達からであろう頑張れと書いたメールが沢山届いていた。
手紙には『両親へ』と宛先が書かれていた中に2枚の紙が入っていた。
喋る事もままならない状態の中で一生懸命に手を動かして書いたのが分かる手紙だった。
一枚目の手紙の内容は学校が楽しかった事、家族との思い出話等が書かれていた。
次の二枚目の手紙を読んだ時に僕はまた泣いた。
『こんなよわいボクだけど、生んでくれてありがとう。つらかったけどガンになってよかった。』
僕の一番身近に一番強い人間が居た。
それが息子だった。
最初のコメントを投稿しよう!