二幕「日陰な日向」

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実は、あの言葉はクラスメートにぶつけたい訳ではなかった。 本当にぶつけたかった相手は、好き勝手に不吉な予言を残して消えた、あの死神達だった。 それでも、日向はあまりの無神経さに腹立たしさを抑えられずにいた。 怒りのまま叫ぶと、日向はそのまま扉を乱暴に開け放って帰ってしまう。 そのあまりに荒々しい後ろ姿に、クラスメートは何も言えずに立ち尽くしていた。 「…どうしよ…。 俺…あいつのお母さんから、伝言預かってきたのに…な。 う~ん……城崎、まっすぐ家に帰ってくれれば、いいけどさ。 …誰か知らないけどさ、雄太さんて。」 しばらくして、哀れなクラスメートは独り言を呟くと、深いため息をついて去った。 誰も居なくなった部室に、軽やかな鈴の音が響く。 リン…リン…リリン。 それは、寂しげに夜空に浮かぶ暗い部室を淡く彩る。 「…様子、変だった…日向。 フラン…あたしのせいかな?」 「…否定はしませんが、当然でしょうね。 真実の重さに気付き始めている証拠ですよ。」 儚い月光に照らされ、ナナの白いワンピースが浮かび上がる。 ナナは少なからず、日向の荒れた様子に落ち込んでいた。 フランはそれに気付いてはいたが、あえて慰めなかった。 ここで甘やかしたら、きっとナナにとって良い結果にはならない。 そんな優しい使い魔の心遣いを、ナナはしっかり感じ取っていた。 「そう…なんだよね。 まったくぅ…日向坊やは、案外頑固だね! やり甲斐があるじゃない…。 こうなったら…意地でも変わって貰うんだから!」 ナナは自身を奮い立たせる様に、語気を強める。 その言葉に、フランも優しく微笑んだ。 「そうは言っても、とても骨が折れる相手ですよ? …大きな奇跡ほど、起こすには大変な苦痛と、困難が伴うものです。 耐えられますか? …貴女と、日向は。」 フランの冷静な指摘。 思わず挫けてしまいそうになる気持ちを、ナナは再び奮い立たせる。 そして、フランの顔をしっかりと見据えた。
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