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実は、あの言葉はクラスメートにぶつけたい訳ではなかった。
本当にぶつけたかった相手は、好き勝手に不吉な予言を残して消えた、あの死神達だった。
それでも、日向はあまりの無神経さに腹立たしさを抑えられずにいた。
怒りのまま叫ぶと、日向はそのまま扉を乱暴に開け放って帰ってしまう。
そのあまりに荒々しい後ろ姿に、クラスメートは何も言えずに立ち尽くしていた。
「…どうしよ…。
俺…あいつのお母さんから、伝言預かってきたのに…な。
う~ん……城崎、まっすぐ家に帰ってくれれば、いいけどさ。
…誰か知らないけどさ、雄太さんて。」
しばらくして、哀れなクラスメートは独り言を呟くと、深いため息をついて去った。
誰も居なくなった部室に、軽やかな鈴の音が響く。
リン…リン…リリン。
それは、寂しげに夜空に浮かぶ暗い部室を淡く彩る。
「…様子、変だった…日向。
フラン…あたしのせいかな?」
「…否定はしませんが、当然でしょうね。
真実の重さに気付き始めている証拠ですよ。」
儚い月光に照らされ、ナナの白いワンピースが浮かび上がる。
ナナは少なからず、日向の荒れた様子に落ち込んでいた。
フランはそれに気付いてはいたが、あえて慰めなかった。
ここで甘やかしたら、きっとナナにとって良い結果にはならない。
そんな優しい使い魔の心遣いを、ナナはしっかり感じ取っていた。
「そう…なんだよね。
まったくぅ…日向坊やは、案外頑固だね!
やり甲斐があるじゃない…。
こうなったら…意地でも変わって貰うんだから!」
ナナは自身を奮い立たせる様に、語気を強める。
その言葉に、フランも優しく微笑んだ。
「そうは言っても、とても骨が折れる相手ですよ?
…大きな奇跡ほど、起こすには大変な苦痛と、困難が伴うものです。
耐えられますか?
…貴女と、日向は。」
フランの冷静な指摘。
思わず挫けてしまいそうになる気持ちを、ナナは再び奮い立たせる。
そして、フランの顔をしっかりと見据えた。
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