一幕 「オカシナ、シニガミ」

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現世でもあの世でも無い暗闇の中に、一人死神の少女が居た。 ここは罪を犯したあの世の支配者…つまりは、死神の監獄であった。 彼女は俯いたまま、ぽつんと座っている。 そこへ看守の声のみが、虚空に響いた。 「…死神NNA7A号、死神法第一条を違反した罪で貴殿は投獄された。 よって、刑期をつとめたため、ただ今より拘束を解く。 確認のため復唱せよ。」 「はい。私、死神NNA7A号は、死神法第一条「死は全てに等しく、それを司る死神は全ての者に等しくあれ。」を違反し、個人の死に深く関わりました。刑期をつとめ、今は深く後悔し反省しています。」 「了解した。ただ今より拘束を解く。」 無機質で冷たい声に、少女のかわいらしい声が応答すれば、暗がりに明かりが一気につく。 「……ふぅ。 やぁぁっと、終わった~! …さすがに今回は長かったなぁ…。」 「…ナナ!ナナ!」 「フラン!久しぶり~ほんと寂しくて大変だったよぉ…。」 息の詰まるような閉塞感からようやく解放されたナナの元へ、一人の中性的な美しい男性が走り寄る。 ナナはパァっと顔を輝かせると、猫耳と尻尾を生やす男性に抱き着いた。 「…ナナ、私は貴女の事が心配で心配で、気が狂いそうでしたよ。 まったく…本当に貴女は、使い魔のことは考えてくれないですね。」 使い魔であるフランは、相変わらず無茶苦茶な主人に苦笑を漏らす。 フランは半ば冗談のつもりだったが、ナナは気まずそうにフランから離れた。 そして、蚊の鳴くような声で呟く。 「…ごめんなさい…。 フランのことは、ちゃんと考えてるつもり…なんだけど…ごめん。」 「…プ。分かっていますよ、困ったご主人様。 …さて、こんな所に長居は無用です。 ナナ、参りましょうか。」 「………………。」 「…ナナ、どうかしました? もしかして、まだ私の言葉を気にしているのですか?それなら…」 「違うの!…あのね、フラン…、あたしが投獄される直前まで調べてた仕事…覚えてる?」 フランは今度こそ笑いながら言って、居心地の悪い監獄から立ち去ろうとした。 しかし、何故かナナはその場に根が生えてしまったかの様に、ぴくりとも動こうとしない。 フランの怪訝そうな言葉に返したナナの答えは、今度はフランを固まらせた。
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