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夕焼けに染まる放課後の演劇部の部室で、どこか闇を背負う少年が、一心不乱にルーズリーフに文字を書き連ねる。
少年の表情は決して楽しげではなく、むしろ焦燥感が浮かんで見えた。
そんな少年をじっと観察する二人が居た。
不意にナナはターゲットの少年の観察を止め、フランに話しかける。
「わぁ~学校だ~!
久しぶりかも!ね、フラン、今回の子はそこの根暗君?」
「……ナナ。
ごほん…城崎日向、15歳、月葉中学3年A組…演劇部所属ですね。」
「へぇ~演劇部かぁ。
フラン…それなら今回は大丈夫だね?」
「?何がですか?」
フランはいきなり根暗呼ばわりされた少年の説明をし、ナナは何故かニヤリと笑う。
フランは主人の意図が分からず?を顔に浮かべ、ナナは楽しげに続けた。
「ほら~あたし達、だいたいコスプレイヤーに間違えられるじゃない?
もっと酷いと、頭のイカレたカップル…だしね。」
「それが演劇部と何か?」
「だって、演劇で衣装使うじゃん☆
だから、あたし達を理解しやすいかもっ!」
「…そうですかね。」
熱く語るナナの持論にイマイチ納得がいかないフランだったが、無駄話をしている間に日向はルーズリーフをクシャクシャに丸めて投げ捨て、帰り支度を始めていた。
フランは慌ててナナを小突き、ナナはゴミと化したルーズリーフを引き寄せると読み上げた。
「僕は母を許すことに決めた。
だって、そうしなければ前には進めないから。
僕は進む、母と共に。」
「?!!」
「こんにちは~日向くん。
ねぇ、何で捨てちゃうの?
…せっかく上手に書けてるのに。」
「な…な…何だよ、お前達!?
ていうか、何で俺の名前まで知って…?!
それに、勝手に人の書いたやつ読むなよ!」
日向は突然、今さっき捨てたばかりの文章を読み上げる少女に腰を抜かした。
謎の少女は、真冬にそぐわぬ白く薄いワンピース姿で、天使の羽根らしきものが背中から生えていた。
そればかりか、少女は猫耳と尻尾を真顔で着用する男を引き連れている。
しかし、混乱する日向の姿にナナは爆笑した。
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