桜と金色と

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  四月の初め、入学式。俺が向かっているのはここ東京でも中々の名門私立らしい『桜ヶ丘学園高校』。 どこにでもありそうな名前だけど、都内でも中々のレベル……だと聞いた。地方から色んな奴が受験しに来て、通っているらしいし。  かく言う俺も、大阪から受験した訳だけど。 そんな事より、この天気。  空は綺麗に晴れ渡り、疎らに雲が流れていて、春独特のぽかぽかと暖かい空気が辺りを包んでいる。 こんなに良い天気だと花見でもしたくなるな。桜も綺麗に咲いてるし。 とはいえ流石に入学式をサボる訳にはいかないので、俺はその春の陽気を楽しみつつ、ゆっくりと歩を進めていった。 ―― 「……これは……結構、ヤバいかもなぁ」 多少道に迷って行き着いたのは桜ヶ丘学園高校名物″地獄坂″(今命名)。   ゆるやかな傾斜が長々と続き、今の時刻――八時二十分から考えれば、まさに地獄。集合時刻である八時半までにこれを登りきり、教室に入って席に着くのはかなりキツいものがあると俺は感じていた。
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