20人が本棚に入れています
本棚に追加
武と竜司がPIDに戻ると君山は苦虫を100匹まとめて噛み潰したような顔で二人を呼んだ。
「一体どういうことか説明してください!」
武は納得がいかないとばかりに君山に詰め寄った。
「分からないのよ」
君山は頭を振る。
「捜査本部からの連絡では上層部から圧力があったそうよ」
「じゃあこのヤマ(事件)はどうなるんですか!!」
「この事件は…上沼と木島の犯行ということで処理されると思うわ」
「ふざけんなよ!相英会が噛んでるのは間違いねぇじゃねぇか!」
竜司が君山の机を拳で叩く。
「俺はぜってー連中を吐かせてみせるぜ!」
竜司の言葉に君山はため息を吐いた。
「竜。私達は警察官よ。警察の人間である限り上層部の決定は絶対なの。分かって頂戴」
君山が顔を下に向ける。武は君山が机の下でギュッと拳を固めたのが見えた。
「私達PIDには本件の捜査停止と通常待機命令が出されたわ」
「…ケッ。馬鹿みてぇ。今まで悪党をぶっ潰すためにPIDにいたのに訳のわかんねぇ命令とやらでみすみす悪党を見過ごすようなことをしろってのか」
竜司は君山を睨みつけた。君山は俯いて口を閉じたまま何も言わない。
「やってらんねえ」
竜司は吐き捨てるように言って待機室を出ていこうとして…
「失望したぜ」
警察バッジを床に叩きつけてその場を歩み去った。
「君山さん」
武がそっと竜司のバッジを君山のデスクに置く。彼の背後には他の三人も立っていた。
「俺達も今回の上層部の命令には従いたくありません。竜が正しいと思います。」
「……」
君山は何も言わず武の言葉に耳を傾けている。
「だから…」
武がスッと警察バッジを差し出す。
「俺達もこの件、捜査しますよ」
他の三人もそれぞれ自分のバッジを君山のデスクに置く。
「……確か相英会の組長は政財界とも深い繋がりがあるとか地検の特捜が言ってたような気が…」
部屋を出て行こうとした武たちの背中で君山がわざとらしく呟く。振り返ると君山が諦めたような、しかしどこか嬉しそうな笑顔を四人に向けていた。
「まったく。あんたたちは」
君山は自分のデスクの上に置いてあったバッジを掴むと次々と放り投げた。バッジは元の持ち主の手の中にスポッと納まる。
「明日の朝9時がタイムリミットよ。あなた達全員懲戒処分だから覚悟なさい」
最初のコメントを投稿しよう!