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俺はソファに腰を下ろし、小さくため息を吐いた。
夏休みも終わったばかりでか、妙に気だるい。
そして、俺を学校に連れて行くアイツがインターホンを鳴らした。
ピーンポーン
短い間でその音は何回も木霊した。
慌ててトーストを一気に口に入れ、アールグレイで流し込む。
見事な味のミスマッチに眉間にシワを寄せながらも、俺はテーブルに置いてあった黒い学校バックを手にして、玄関に走った。
ガチャ
「おはよう暁夜。相変わらず眠そうだな」
透き通るような涼やかな声が、若干男勝りな口調で俺を笑った。
銀髪が朝風に靡き光をまばらにする。
「うっせぇな。朝は誰だって眠いものなんだよ」
そうか、とそいつは微笑した。
雰囲気的には大人びていて、物腰だって柔らかい。
けど若干のあどけなさを声と顔に残したそいつは、間違いなく美少女だった。
薄青い瞳は海の宝石のようで、銀の長髪は、一本一本をくしけずったかのように滑らかで艶やかだ。
「あはは。寝癖が立っているぞ暁夜。アニメのキャラみたいなアホ毛だな」
愉快そうに、それはそれは愉快そうに笑う。
子供染みた行為は、こちらを笑うものでなければ、こちらもつられて笑ってしまいそうなぐらい無邪気だ。
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