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二階、一年C組の教室に入る。
普段あっけらかんとした教室内は、他の教室よりも賑やかだった。
先程からポツポツと途切れ途切れに聞こえる会話の中で、転校生、という単語がよく飛び交う。
転校生が来る、と予想して間違いないだろう。
そして、男子が騒がしい辺り、転校生は可愛いということか。
教室の中列の最後尾まで歩き、机の隣に鞄をかける。
「なるほど。どうりで賑やかなわけだ。確かに俺も期待を――」
「何を期待してるのよ?」
言葉に軽く棘のある声が俺の背中を駆け巡った。
気疲れか何かで肩を落とし、ゆっくりと顔だけを後ろにやる。
そこには――
「おはよーさん暁夜。今日も脳天気そうで何よりだわ」
人の気も知らずに自由に悪態をつきまくる、若干濃い茶髪をした少女がいた。
宝堂院 華月(ほうどういん かづき)。
髪は魅姫と同じぐらいで、腰辺りまで伸びたロング。
横髪も長く、腕辺りまではあるだろう。
けど、右側はピンクのリボンで結んである。
態度にこそ棘はあるものの、魅姫には引けを取らない美少女で、男子の憧れの一人だったりする。
かく言う俺も、会話をするまでは憧れだったわけだが――
「なによ?」
「いいや、何も」
この態度を見たら憧れなんて嘘のように消え去った。
「で、アンタも転校生に期待してるわけ?」
ぶっきらぼうに会話をふる。
俺に話しかけてきたということは暇なんだろう。
「少しだけな」
「でしょうねぇ。何でも、すっごいお嬢様ですっごい可愛いらしいわよ」
「凄いを強調するほど凄いのか?」
「そ。まぁ、男子達も期待はしてるものの、話し掛けるのは控えてるみたいよ。職員室に行けば会えるけど、話し掛けた奴は女子しかいないわ。高嶺の花なんでしょうね」
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