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僧が俺の首を締めた夜。
ゆいはふすまの奥で怯え、逃げる機会を失った。
あれは、癖だから気にするまでもないと笑ってやったのだが、どうも、あの女は気が弱すぎる。
それだけが気がかりなところだった。
この女が、昔、何をしていたのかは知らない。
裳裾をたくし上げて、川に入り禊をしていたのを人買いにさらわれたのだ。
乱暴な。
と、言ったところ、ゆいは、口減らしのいい口実になる。
と、言った。
そんなものか。と、改めて眺めると妖しい。
色好みの僧に大枚を叩かせたのだ。女の、ぞんざいにまとめた髪も袖から覗く手も日に日に艶めいてくる。
俺が、緋の衣を身につけても、金糸を髪に絡めても年々衰えていくのに対して、この女は日々色を強めている。
口惜しいやら、頼もしいやら。
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