連歌師

2/10
前へ
/10ページ
次へ
僧が俺の首を締めた夜。 ゆいはふすまの奥で怯え、逃げる機会を失った。 あれは、癖だから気にするまでもないと笑ってやったのだが、どうも、あの女は気が弱すぎる。 それだけが気がかりなところだった。 この女が、昔、何をしていたのかは知らない。 裳裾をたくし上げて、川に入り禊をしていたのを人買いにさらわれたのだ。 乱暴な。 と、言ったところ、ゆいは、口減らしのいい口実になる。 と、言った。 そんなものか。と、改めて眺めると妖しい。 色好みの僧に大枚を叩かせたのだ。女の、ぞんざいにまとめた髪も袖から覗く手も日に日に艶めいてくる。 俺が、緋の衣を身につけても、金糸を髪に絡めても年々衰えていくのに対して、この女は日々色を強めている。 口惜しいやら、頼もしいやら。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加