第壱夜

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「何って、決まってんだろ? 逃がしてやろうと思ってたんだよ」 「の割には意思伝達が出来てなかったような気がするが?」 思いっきり殺そうとしてたぞ、しっかりと釘を刺す。 「うっ…。」 言葉を濁らしたのは酒呑の方だ。 彼は首を跳ね飛ばされた男に、逃げるよう促すつもりだったのだ。 しかし、何を思ったのか殺そうとしてきた。 一度は生かしてやろうと思ったのだ。 そのままあの男の仲間と同様に気絶させるつもりだった。 しかし、男の行動に茨木の忍耐袋の緒が切れてしまったらしい。 茨木童子。 それがこの男の名だ。 酒呑童子の右腕として、大江山の鬼達の副将を務めている。 普段は副将らしく、冷静沈着なのだが、仲間を悪く言われると、とたんに沸点が低くなる。 実際、首を切られたこの男はさんざん自分達を鬼と罵った。 そして結果がコレだ。 自分達には耳にタコができる程聞かされた言葉だというのに、茨木はどうも許せないらしい。 の割には自分に言うのには別に構わないというのだから、大した仲間思いだ。
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