第壱夜

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それを知ってか、茨木はあっさりとそれを許した。 「まあ、村に着いてからでもいいんだし」 「えぇーっ!!」 すっかり安心しきっていた隙での攻撃だった。 「はあ…。んじゃ、帰ろっか、うん…。」 すっかり疲れきった声だ。 そんな首領の様子の事など気にもせず、他の鬼達は帰る準備を開始する。 「酒呑」 「んあ? なんだ?」 茨木に呼び止められた。 「俺はこのままちょっと出かけてくる」 「は? なんで?」 酒呑の質問に一気に空気が変わった。 重苦しく、血生臭く、まるで、 八つ裂きにされそうな そんな、空気だ。 しかし、茨木はというと、口元をつり上げ笑っている。 誰もが美男子と認める茨木の笑顔は、妖艶で、艶めかしく、そして、 どんな笑顔よりも、冷たかった。
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