第壱夜

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満月が輝いていた。 「へ?」 おかしい。 自分はさっきまで酒呑童子を見ていた。 なのに何故満月が――――空が見えるのか? 何故頭が上に向いているのか? 銀が見えた。 銀色の鬼だ。 それが何故か逆さに映る。 なんだこれは? これではまるで、 まるで、倒れ、て、いる…よ、うな………? ゴトリ 重い物が落ちたような音が響いた。 いや、実際に重い物が落ちたのだ。 先程まで酒呑童子を殺そうと刀を振り上げた、男の首が。 「あーあ。なに殺してんだよ。 茨木」 「お前こそ何やってんだ、酒呑?」 酒呑童子の問いかけに、銀色の鬼が仏頂面で逆に問いかけた。 鬼は酒呑童子と同じ金の瞳に長い銀色の髪を無造作に垂れ流していた。
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