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朝。
忌々しく鳴るこのケータイ。
俺のWIN。
「黙れっ、滅べっ」
俺はケータイを洗濯物の山に全力で投げ込み、枕元にあるはずのリモコンを手探りで探す。
あった。
テレビの電源を入れる。
程なく流れたこの音楽。
おひるやーすみはウキウキウォッチン~♪
朝だと思ったら昼だった。よくあることだ。
「あーぁ、タモさん始まっちったよ」
短かく溜め息をつくが、とりあえず学校に行かなくちゃいけない。
というか、他にすることもないし。
なんとか布団から出て学校の用意をする。
もう昼だから教科書は少なくて済む。
鞄が軽いと嬉しい気持ちになるんだ。
制服を着ながら、さっきの洗濯物の山からケータイを発掘して着信履歴を見る。
シュンから。
しかも3件。
めんどくさいような、ハプニングのような、朝からなんとなーく嫌な予感。
ケータイを洗濯物の山にリリースして、玄関を出て鍵を閉める。
晴れてるし、鞄は軽いし、口をついて出たこの曲。
「きっと明日はー、いーいートゥモロー」
ん?
いやいや、待てよ。
「きっと明日は」ってことは、「恐らく今日はよくないトゥデイ」ってことか?
これは今月最大の発見かもしれない。
教室に着いたら速攻でシュンに教えてやろう。
今の日本に絶望してるのは俺たちだけじゃなくタモさんも一緒なんだ、って。
「きっと明日はいいトゥモローねぇ…」
わだかまりを抱えて日々過ごす僕らにとって「いいトゥモロー」が来るなんて到底思えなかったし、それでよかった。
がむしゃらに楽しければ十分だった。
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