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普段はお酒とタバコと汗と香水の匂いが充満している店内に、今はコーヒーの香りだけが漂う
沙羅はどこを見ているのかわからないすばるの前にカップを置いた
「隣に来たらいいやん?」
すばるの言葉に沙羅は素直にしたがった
何かが満たされようとしていた
この感覚を沙羅は知っている
満たされたい
けど、満たさないで離れないで欲しい
心が汚れていくように、心に何かが放たれ、汚していく
振り切るように沙羅は首を軽く振った
「………?なっ、何や?」
「あっ、何にもないです」
すばるの目が少し心の感覚を鈍らすのだ
「あの、目、綺麗ですね」
すばるはむっとした顔をして、顔をそらした
何か悪いことを言っただろうかと沙羅は不安になったが、すばるが小さな声が『ありがとう』と言ってくれたのでほっとした
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