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ぼんやりと仕事をこなす沙羅を優は優しく見つめていた
優はすばるたちとの付き合いこそ短いが、すばると出会って何人か沙羅のような女の子を見てきた
それは恋に落ちるとか恋い焦がれるとかそんな感じとも違う
心が奪われる
まさにそんな状態
沙羅が平素を装っていても、優からすればそんなのは簡単に剥がれ落ちる仮面だった
「ねぇ、すばるに汚された?」
優はある日、沙羅に聞いてみた
心臓の位置を指差しながら
ココロを、と言わんばかりに
「なっ、何ですか?別に汚されたなんて………」
沙羅は動揺を隠せなかった
「ふふふ。動揺してるね」
優は意地悪な妖しい笑みを浮かべる
「当たり前のことだよ。隠さなくていい」
「当たり前?」
「だって、彼はアイドルだもん。それに僕も汚された一人だ」
「店長も………?」
「汚されたんじゃなくて、真っ白にされたんだけどね」
どういう意味?と聞こうとした矢先、優の携帯が鳴る
「あっ、もしもし………あぁ、すばる。今、ちょうど噂をしてたんだよ………そんなに怒鳴るなよ。ちょっと話してただけだよ………えっ?もちろん、沙羅だよ。他にいないでしょ?」
すばるからの電話に優は嬉しそうだった
優しいお兄ちゃんのような顔をして
「今日?暇だから早めにしめちゃおうかと思ってるんだけど………あぁ、おいでよ。待ってる………さすがっ!一人?………わかった。じゃぁまたね」
電話をしまって、優は沙羅に向き直った
「というわけで、今日、あと1時間くらいですばるが来るんだけど………どうする?」
「………どうする?」
優の「すばると会いたい?話したい?」と多少、意味を含む言葉に沙羅はムッとした
だけど、そんなイラつきよりもすばると話がしたいという欲望が勝った
「他のお客さんくるかもしれないし、います」
「そうだね。まぁそういうことで」
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