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「なぁ、沙羅?」
すばるは背を向けられているほうに声をかけたが、沙羅の返答はなく、気持ちのよさそうな寝息だけが聞こえてくる
「なんや、まじで寝てんのかい」
すばるはぽつりとつぶやいた
沙羅は眠れるわけもなく、本当は起きていた
けど、なんとなく返事をしなかった
寝ていると分かったらすばるはどうするのだろうか?という好奇心に駆られた
「ほんまに酒、飲めへんかったんやな。嘘かと思っとった」
すばるは小さな声で、沙羅を起こすまいと話しかける
沙羅はますます寝た振りを続ける
本当は起きていることがばれているのでないかと、不安の影が一瞬だけ沙羅に圧し掛かったが…
「なぁ、沙羅はなんで日本におるんや?なんで一人なん?」
沙羅は自分の体が強張るのを感じた
「なぁ、俺はお前が心配やねん………なぁ、沙羅。なんでお前はいつも寂しい顔してるんや?」
何でそんなこというの?と沙羅は聞き返したくなった
「………」
ギシッとベッドが人の動いた重みで鳴いた
すばるの手が沙羅に伸びる
沙羅の美しい黒髪をすばるは愛おしそうになでた
沙羅は目を閉じて、心地のよさをかみ締める
同時に背中がゾクゾクする
あぁ………なんで、あんな奴とすばるの手を同じように感じてしまうの?
すばるの顔が沙羅に近づき、頬に軽く唇を落とした
えっ!?
驚いて声が出そうになったが、沙羅は寝た振りを必死に続けた
「おやすみ、沙羅」
すばるは沙羅にそういい残すと、ベッドから降りた
床に置かれている水で水分を取って、そのまま部屋を後にした
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