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沙羅は声のほうを見た
なんで?なんでいるの?帰ったんじゃないの?
すばるが沙羅に駆け寄って、抱きしめた
すばるの体は決してたくましくはなかった
どちらかといえば華奢な肩と小さな体
女の人のようなのに、抱きしめられると女の人の柔らかさはなかった
「なっ………な…」
沙羅の耳元ですばるがふっと笑ったのが聞こえる
「な、なって何やねん」
「なんで……いるの?」
すばるの腕の力が少しだけ強くなる
「忘れ物したんや」
「そっか………」
沙羅の涙はすばるの登場で驚きのあまり止まっていた
すばるの体が離れ、沙羅の顔を覗き込む
「なんで、泣いてたんや?」
すばるの大きな黒いまっすぐな瞳に沙羅の仮面は外れる
ボロボロと再び涙がこぼれた
あぁ、この人に嘘はつけない
「なんで、お前はそんな顔すんねん」
すばるがまた、沙羅を抱きしめる
すばるの体に沙羅の腕も絡む
床に映し出された影は、一つに溶けていた
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