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すばるの背中に沙羅は爪を立てていたらしく、猫のような引っ掻き傷がシャワーで染みた
「明日の撮影、確か上半身、脱ぐやつちゃうかったっけ?」
困った
すばるは熱いシャワーを浴びながら、メンバーの反応を想像して恥ずかしくなった
獣のように、本能のまま、すべてを忘れて体を重ねた
あとは歌うだけだ
あとは歌うだけで、俺は満たされる
一瞬だけでも、解き放たれたい
「なぁ、沙羅」
「何?」
「お前、俺の歌、聞いたことある?」
「…まだ」
「………そっか」
沙羅はすばるの濡れた髪をタオルで拭いていた
「気持ちえぇな」
「ふふ、それはよかった」
穏やかな空気が流れ、すばるは機嫌良く、鼻歌を流した
その時、ぐぅと沙羅のお腹が大きな音で鳴った
「ぶはっ!!」
すばるは沙羅の手を払い除けて、ベッドに笑い転げた
「タイミング考えろやぁ」
「しょっ、しょうがないでしょっ!」
すばるも沙羅もこの空間が心地よすぎて、なんだか悲しくなっていた
二度と同じ時間はやってこない
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