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荒い呼吸の男は、また体をガサゴソと動かし出し、不審な動きをしているようでした。
でも私は、男のいる方向は気持ちが悪くて絶対に見られなかったし、それよりも早く警察に通報することしか頭にありませんでした。
5秒ぐらい経ったとき、やっと電話をとって通話口から何かを話す音が聞こえてきたんです。
でも、何と言っているか聞き取れませんでした。
なぜなら、外にいる男が、突然ドアノブを力一杯に回しては引っ張り、引っ張っては回し、それを繰り返しだしたからでした!
鍵は掛けているけど、それを壊して入ってきそうな勢いで、扉をガチャガチャと目一杯の力で動かす音が、室内全体に広がり、電話の声を聞き取るのもままなりませんでした。
私も発狂寸前になり、とりあえず警察へ名前や住所、要件だけを連呼し、相手の反応を確認する余裕すらありませんでした。
耳元の電話から『今すぐ向かい……』という断片だけは聞き取れたものの、いつ来るのか、何人来るのか、状況は理解しているのかなど、一切のことは全く分からないまま、私も『助けて助けて、早く、殺される、男が、部屋にくる、怖い、嫌だ、死ぬ、殺される』など、脈絡なく単語だけをずっと連呼していました。
ガチャガチャと体の芯から恐怖を感じる音が響くなかで。
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