965人が本棚に入れています
本棚に追加
どのくらい経ったのか、時間の感覚が曖昧になり、正確には分かりませんでした。
私はずっと膝を抱えたまま、男がいることを忘れよう忘れようとし、じっと床の一ヶ所を見つめ、
『助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて』とうわ言のように繰り返していました。
すると男が、ドアノブを動かす手を止め、軽く扉をノックしてきたんです。
トントンと。
『もしもし~』
『どうじだの゛~?』
『あ゛げで~』
『あ゛げでよ゛~』
『あ゛げでっでば~』
『ねぇねぇ~』
次第に男が扉を叩く力が強まり、話す声も大きくなりだしました。
ドンドン、ドンドン!と。
『あげでよ゛~!』
『はや゛ぐ~!!』
『開けろって言ってんだろっ~!!!』
叫び声に近い怒声で、男が叫びだしました。多分、マンションのフロア全体に響き渡ったと思います。
部屋は完全に男の声の残響に支配されていました。
『早くしろって言ってんだろうがっっっっっ!!!!!!』
もう私は何も考えられず、うわ言を繰り返して、縮こまっているしかありませんでした。
最初のコメントを投稿しよう!