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気が付くと、男の声もドアをこじ開けようとする音も聞こえなくなり、代わりに
『警察です!大丈夫ですか!?』
という、さっきまでの声とは全く違う、澄んだ安心感のある声が聞こえてきました。
ベッドの上で小さくうずくまっていた私は、覚束ない足取りで玄関へ向かい、ドアスコープから外を覗くと、いかにも警察官然とした男が二人立っていました。
急いで駆けつけてくれたのか、少し息が上がり肩を上下させていました。
安堵に包まれた私は、鍵を開け彼らを招き入れました。
扉を開けると、片方の警察官が懐から警察手帳を取りだし、身分を証明するように私に見せてくれました。
私は本当に安心しきったせいか、思わず玄関口に座り込んでしまいました。
その下がった視線の先には、男が脱ぎっぱなしで逃げたと思われるズボンがそのままの形で置かれていました。
さらにその横の床には、男のものに違いない、精液が飛び散っていました。
込み上げてくる吐き気をなんとか抑え、立ち上がろうと玄関に手をつき体を起こそうとしたときでした。
新聞受けに 白い紙切れが入っていることに気付いたんです。
恐る恐る取りだし中を見ていると、汚い雑な字で、
『また来るね』
とだけ書かれていました。
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