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『お母さんこれは?これ安売りしているよ?』
『まぁ…本当に安いわね。これなら良いわよ。すいませ~ん!』
『はいはい。どうしましたか?』
『これなんですけど……』
私がここに来てから三ヶ月後の夏の終わりだった。
彼が私を見つけ、くたくたに汚れていく私を助けだしてくれた。
『それにしても汚いわね。ちょっと洗ってもらえます?』
『良いですよ。外の水道でも良いですか?……』
勢いの良い水道水で溜まりに溜った埃や砂が洗われていく。彼は私を受け取るとすぐに口を付け生暖かい空気を吹き込んできた。
『お母さんこのくらい?』
まだ入るよ。
『もうちょっと入るんじゃない…』
彼は力いっぱい息を吸い込み息を入れようとしてきた。だけど全てもれて前よりも私は縮んでしまう。
……それでも彼は諦めようとはしなかった。
『もうしょうがないわね貸してみなさい。』
『嫌だ僕がやるの!!』
彼は私を抱き締めて誰にも渡そうとしない。柔らかな腕が私を締め付けていく。
『もうお母さん知らないからね。』
彼は何度も口を付けて息を吹き込んできた。泣きそうな顔がなんともいじらしい。
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