徒情(あざなさけ)

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十分くらい格闘していたかもしれない。私は大きくパンパンに膨らみ本来の姿になった。 『お母さん出来た!!見て見て僕が膨らませたんだよ!!ねぇお父さんも見てぇ!!』 『おっ頑張ったな!よぉしあっちいって遊ぶか!』 『あ・な・た!まだパラソル立てていないのよ?遊ぶのはもう少し待ちなさい……』 彼は大人しく待ち続けた。どうやら自分の二倍は有る彼女が怖いらしい。 きつくきつく抱き締められては開放される。それだけでも私は破裂しそうだった。 だけど人の温もりは不思議なもので、今、私は必要とされているんだ!という満足感で満たされていく。 私は彼に救われるまで寂しい毎日を送っていた。 同じ日に来たのに次々と迎えが来る仲間達。私はただ横目で見ているしか出来なかった。 売れ残っては溜め息をつかれる毎日。 日に焼けて魅力の無くなっていく私。 新しい仲間が来ては奥に追いやられ、しまいには忘れられていく。 まだあったの? 売れ残りでごめんね。 つい最近半額にされちゃった。私ってもう価値が無いのかな……。 でも、今は彼に抱き締められている。
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