徒情(あざなさけ)

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『あっ』 突然の事に私も彼も驚いた。 岩場の尖った場所に当たってしまい、私が破けてしまったのだ。 彼の生暖かい息が私から抜けていく。 彼は泣き出した。泣きながら私を掴み、振り回す。 そのままトボトボと彼女の元へ帰って行った。 『もう壊れちゃったの!?』 彼は泣き止まない。 『仕方ないわね。こっち来なさい!』 彼と彼女は私と出会ったあの店まで急いで歩く。 『すいませ~ん!!ちょっとこれ膨らましただけで壊れちゃったんですけど!!不良品でしょ?取り替えて頂戴!!』 『え!!ちょっと見せてもらっても良いですか?』 『何よ!!私を疑っているの?良いわよ!見たいなら見れば良いじゃない!!』 『も…申し訳ございません!只今同じ商品とお取り替え致しますので……』 私と彼は引き離された。同じような子が彼女に手渡され、彼は泣きやみ無邪気に喜んでいる。 彼の背中は決して私を振り向く事無く……立ち去っていった。 傷は癒えそうに無い―――――
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