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早く、皆に知らせなければ。
僕は辺りをしっかり見回し、敵が居ないことを確認し、その場を後にした。
男達は部屋にある大きなモニターを見つめていた。薄暗い森の中を映し出しているその映像を、目が乾くほどにずっと見つめる。木々に隠されたカメラから映し出される映像には、まだ逃げ惑う人の影は見えていなかった。
「今回は何人残るだろうか。前回、前々回と誰も残らなかったのは正直つまらなかった。しかし、一週間から三日に減らしたのだから、きっと数人は残るだろう」
「そうですな。流石に一週間は長すぎたようですな」
「君は誰に賭けたんだい?」
「それを言ってしまってはつまらなくないですか?」
数人の男達の低い笑い声が室内に響く。
「お? 動きがあったようですな」
その男には落ち着きが無かった。
「くそ…なんでこの俺がこんなことに巻き込まれてんだ」
暗く、何も見えない森の中で、ふらふらと歩き始めてもう十分は経っているだろう。
しかし男は未だにコンタクトを付けていなかった。
コンタクトを捨てて逃げればいいんじゃないのか?と云う考えがふと思い浮かぶ。
そして男はすぐにそれを実行した。
コンタクトを地に落とし、じゃあなクズ共と呟き、少し速めに歩き始めた。
しばらくして、男はロープを見つけた。黄色く細い、頼りないただの紐であった。
「これがこのゲームの範囲なのか」
男は股を大きく開き、そのロープを越えようとした。
が、その瞬間、音も無く彼の頭を何かが通過した。
男はしばらくそのことに気付かなかった。
目に映る赤いものを見たとき、ようやく痛みがやってきたのである。
男の頭を通過して行ったのは、銃弾であった。
「……あ?」
男は崩れ落ちるようにして倒れた。すぐに別の男が二人来て、死体を運んでいった。
-END-
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