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きっと皆まだ生きている。
僕はそう信じながら、息を潜めて木の上に居る。
僕は、彼らの力がないとこのゲームから逃れられないと思っている。きっと六人の力が絶対なのだ。
僕は下の様子を伺いながら、木の上から下りる。
取り合えず前へ進むことにした。
きっと何か見つかるはずだ。
「な、何だ? アレは…」
担架…二人の大人…アレは…? 椎原、先輩。
ここからでも分かった。
アレは椎原先輩だ。
担架から手がはみ出ているが、全く動かない。きっと、すでに。
僕はすぐに走り出した。今の光景を忘れようと、必死に。
「二人死にましたね。椎原と、これは、木村ですか?」
担架で運ばれてきた死体を見下ろし、男は言った。
「あ~あ、私はどうやらハズレに賭けてしまったようですね」
「誰に賭けていたのですか?」
「私は椎原ですよ。あなたは?」
男達は死体を片付けさせ、話を続ける。
「私は新藤ですよ。なんたってヤツは……」
「そういえばそうでしたな。はっはっは」
すでに椎原先輩が死んだ。
あと、五人しか居ない。
どうやって皆に会って、このゲームが賭けであることを知らせようか。
僕の頭の中にはそれしかなかった。
椎原先輩のことは残念だけど、そうネチネチ言ってられない。
僕はまだ奴らと戦っている最中なのだ。
奴らがどこに居るのか分からない状況で、憂鬱になどなってられないのである。
不意に、後ろから声がする。
「動くな」
背中に、一筋の汗が流れる。体が、動かない。
「どうやらまだ生きていたようだな」
「新藤?」
「年上にタメ口とは失礼なヤツだな」
新藤は僕の前に顔を出す。
目には×印が見える。
ちゃんとルールは守っているようだった。
-END-
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