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※雲骸
僕には気になることがある。
「ねぇ、恭弥」
「何、骸」
本から顔をあげずに、恭弥は僕に返事だけよこした。
「恭弥は、もし僕が死んだとしたら、来世でも僕を愛してくれますか?」
輪廻を回っていて、ふと気になったこと。
もしも。
もしも僕の今使っているこの“六道骸”という身体が朽ちたのなら、恭弥は“僕”を愛してくれるのだろうか。
「ねぇ、どうなんです?」
「そんなの決まってるじゃない」
本に目を向けたまま、軽く言葉を続ける。
「愛さないよ」
「え?」
「だから、愛さない」
きっぱりと告げられた言葉は意外で(だってどの本も漫画もドラマも“来世でも君を”といっていたから)僕は目をぱちくりさせてしまった。
「それは、何故ですか?」
若干寂しい気持ちを覚えながらも好奇心が勝り僕は問う。
すると恭弥はパタンと本を閉じ
「だって僕の骸は一人しかいないから」
と僕の目を見て告げた。
「来世の骸は来世の骸で例え魂が同じでも今の骸とは違うでしょ。同じ骸でも“君”じゃなきゃ、それは浮気だ。」
真顔で言う彼に冗談の色は全く見られない。
「来世の君は来世の僕に愛してもらえばいい。この“雲雀恭弥”は今、ここにいる“六道骸”しか愛す気はないよ」
それだけいうと、再び本に目を戻してしまった。
しかし、髪の間から覗いた彼の耳は、僕の顔と同様に真っ赤で。
読んでいるのかいないのか分からない程早いペースでページをめくる恭弥に愛しさが募り僕は恭弥に抱き着いた。
【僕はただ、君だけを愛す】
(だから死なないでよね)
(貴方の方こそ。)
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