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※雲骸雲
「恋と愛の違いってなんだと思います?」
僕の膝の上でぐっすりと眠りこけている恭弥に、僕は問い掛ける。
返事は当然、返ってこない。
「ある雑誌によると、恋は下心、愛は真心、だそうですよ。」
一体誰がいったのかわからないけれど、漢字と掛けて恋が下心なんて、言い得て妙。
「別の本によると。」
サラサラと指の間から零れ落ちる漆黒の短髪の感覚を楽しみながら僕は続ける。
「一緒に死のうとするのが恋、自分を犠牲にしても相手を生かそうとするのが愛、らしいです。」
ただその理論から行くと銀河鉄道の夜の蠍も、最期には愛に芽生えたのだろうかとも考えたが、あれは別の話だな、と思考を止める。
それよりも。
そんなことよりも僕が知りたいのは。
「それならば、恭弥を僕の手で殺したい、僕のこの感情は一体なんなのでしょうね?」
「酷く歪んだ愛なんじゃない?」
返ってこないと思っていた言葉に僕は少しだけ驚く。
「おや、起きていたのですか。」
「うん、君が五月蝿いからね。」
眠たそうに目を擦り、欠伸を一つ。
「どういう、意味ですか?」
再び目をつむり眠る体制に入った恭弥に構わず、僕は言うと恭弥はめんどくさそうに口を開いた。
「だって裏を返せば、君が殺すまで僕は誰にも殺させないってことなんだからさ。」
【これも、一つの愛】
(成る程、納得。)
(ところで、殺したいなんて思ってたの?)
(ええ。実は。)
(奇遇だね。僕もだよ骸)
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