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「にこ。」
我に返って父さんを見上げると柔和な笑を浮かべ、こっちを見てる
「日本に、帰らないか?」
ただその一言を私に言うと、母さんの墓地に目を向けてまた押し黙った。
目の前に立つ冷たい石に深く彫られた母さんの名前と生まれた日・死んだ日が5歳の私に何かを言っていた。
分かってる。『答え』だなんて、一つだけ
黙っている父さんを見て、無邪気な笑顔を浮かべて、
「うん。帰る」
そしてまた墓地を見つめる。
私は見てしまった。
父さんの整った前髪からちらり、と。
少し垂れ下がった眉。曇った父さんの目。
私はやってしまった。
人生で初めて、"作り笑い"というものを。
そして、
崩れ出した"何か"。
ここで、気がつくべきだったのか。
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