カフェ・キエフと丸田アパート

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 俺が小説を書いているというのは実のところ全くの嘘ではない。  高校の頃から自分で小説を書きたいと思い始め、大学時代には趣味の近い友人のサークルに加わり、同人誌に2度ほど寄稿した。  だがそれだけだ。  今や同人誌は、あくまで漫画がメインであり、小説はページのかさ上げに使われるに過ぎず、事実同人誌を購入したものの目当ては全て友人の漫画(それも人気漫画のエロ系二次創作)であった。俺の小説は誰にも注目されていなかった。  それでもまだ創作意欲は自分の内面のどこかで燻っているようだった。だがもう一度書くきっかけが見つからなかった。書いたところで世に出す手段があるだろうか、それを考えると書き出すことが躊躇われた。  そうして小説から遠ざかったまま、気がつけばただ何もしないだけの年月が流れていた。
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