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それは壺とは言っても、人間の頭くらいの大きさの少々歪な球形で、中に空洞のある氷の塊だった。
氷の壺を上からのぞき込むと、中には7分目くらいまで澄んだ水が溜まっている。
その水面には、自分の姿と、その背後の7色の影が見える。
7色の影は、絶えず揺らめき、形を変え、その様はまるでシャボン玉の表面のよう。
いつか見た、氷の壺の中に映る自分の姿は、顔は深い青一色で表情は見えず、代わりに自分の背後の7色の光がやけに鮮やかだったのを、今でもはっきりと記憶している。
それ以後、壺を見ることもなく、その存在すらも忘れて数十年の間生きてきた。
あの壺はいつ、どこで見つけた物だったのか、今ではそれすらも思い出せなくなっている。
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