氷の壺

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 人に聞くことを諦め、自力で探すことを決心し、子供の頃に行ったことのある場所を1つ1つ見て回ることにした。  それは学校であり、公園であり、空き地であり、資材置場であり、堤防沿いの残土置場であった。  大人になってそれらの場所に行くと、そこは私有地であったり、関係者以外の立ち入りを禁じていたり、子連れの母親連中に占拠されていたりした。  そこはいずれも私が立ち入れる場所ではなくなっていた。と同時に、そこが氷の壺があるはずもない場所であることもわかった。  あれは、昼でも日の当たらない場所にあったはずである。  あるいは、あの場所自体が失われてしまったのだろうか。
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