氷の壺

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 物見ついでに、かつて実家があった場所に行ってみることにした。  そこには今でも昔と同じ家が確かに建ってはいたが、表札には、当然ながら別の人の名前が書かれていた。  私の家族がこの土地を離れて10年以上になる。両親は既に他界し、まともな職にありつけなかった私は姉夫婦に実家を託して都会へと出たのだった。  結局、私は定職にも就けず結婚も出来ずにこの年になってしまい、姉夫婦とはもう何年も連絡を取っていない。  氷の壺を見つけた時、その場には姉もいたような気がする。私は久しぶりに姉に電話してみることにした。  「もしもし、××だけど。……うん、久しぶり。……え? ああ、まあそれなりに。生きてはいけるさ。うん、来年のお盆あたりには、多分……」  「それでさ、ちょっと聞きたいことがあって、……いや、金の話じゃないよ。子供の頃さ、『氷の壺』って見たの、覚えてない? ……え? うん、いや、別に大したことじゃないけど」  「……うん、またそのうちに。今日はちょっと用事で出先からだから……それじゃ」  結局、私の記憶以外に手がかりはないらしい。
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