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1日の授業を終え、帰宅の準備をしていると
敬と浩一が近付いてくる。
「なぁ、千秋~
本当に行かないの?」
「…お前もしつこいな……」
「だってぇ~」
諦め切れないといった風に
敬が恨めしそうに俺を見る。
「…俺なんかじゃなくて、浩一誘えよ」
「「えぇっ!?」」
見事にハモった。
見ると、敬はあからさまに動揺し
目が泳ぎまくっている。
浩一は、気まずい様子で俯き
心なしか、眉間に皺が寄っている。
「えっと…来る……?」
「……いや、…俺は、いい………」
「…そ、そぅ……」
―‐…沈黙。
いつも、こうだ。
何でこいつ等は、いつもこうなんだ?
互いに、互いの気持ちを隠し
自分に嘘を吐いている。
「端から見てりゃぁ
バレバレだっつーのに……」
俺はあの、無差別に他人を誑し込む
翠の邪眼を隠す為に掛けている
黒縁の伊達眼鏡を
慣れた仕草でくいっと直した。
「こんなんで動揺しちゃって…
これから先ずっと
隠し通して行けると思ってるのが凄いよね」
「千秋?
何さっきから、1人でブツブツ言ってんの?」
俺は、にっこりと微笑んで言った。
「……別に?」
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