006:嘘つき

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「お待たせ」 鳥居の下に立つオレに走りよる瑠璃を見て、あやうくリンゴ飴を落としそうになった。 なんてキレイなんだ! 毎年行ってる神社の祭りなのに、なんで今年は浴衣なんか着て来たんだよ?髪も結い上げてて、うなじが… つか、何ドキドキしてるんだよオレは!相手は瑠璃だぞ? 「ねぇ、似合う?」 袖を広げてクルっと回って笑いかける彼女。 ヤバい、マジ可愛い。 オレは瑠璃に背を向けて、神社に面した通りを眺めた。 「ったく、赤城たち遅ぇなぁ」 「あ!シカト?」 オレの背中に瑠璃の非難の声が飛ぶ。 仕方ないだろ、まともに見れないんだよ…可愛すぎて。 「ムリに女らしくしても、全然色気ねぇんだよ」 うわぁ、オレって嘘つきだ。 後から来た仲間たちが瑠璃を褒める。オレはそれを「ありえないだろ?」と笑い飛ばす。 なんで素直に「可愛い」の一言が出ないんだろう… 懐かしく恥ずかしいあの夏、今のオレなら素直に思ったままを伝えるんだろうか? いや、また同じことをするかもしれない。 オレはまだ、瑠璃だけには「可愛い」と言ってあげられてない。 たぶん、これからもずっと…
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