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「お待たせ」
鳥居の下に立つオレに走りよる瑠璃を見て、あやうくリンゴ飴を落としそうになった。
なんてキレイなんだ!
毎年行ってる神社の祭りなのに、なんで今年は浴衣なんか着て来たんだよ?髪も結い上げてて、うなじが…
つか、何ドキドキしてるんだよオレは!相手は瑠璃だぞ?
「ねぇ、似合う?」
袖を広げてクルっと回って笑いかける彼女。
ヤバい、マジ可愛い。
オレは瑠璃に背を向けて、神社に面した通りを眺めた。
「ったく、赤城たち遅ぇなぁ」
「あ!シカト?」
オレの背中に瑠璃の非難の声が飛ぶ。
仕方ないだろ、まともに見れないんだよ…可愛すぎて。
「ムリに女らしくしても、全然色気ねぇんだよ」
うわぁ、オレって嘘つきだ。
後から来た仲間たちが瑠璃を褒める。オレはそれを「ありえないだろ?」と笑い飛ばす。
なんで素直に「可愛い」の一言が出ないんだろう…
懐かしく恥ずかしいあの夏、今のオレなら素直に思ったままを伝えるんだろうか?
いや、また同じことをするかもしれない。
オレはまだ、瑠璃だけには「可愛い」と言ってあげられてない。
たぶん、これからもずっと…
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