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「あと、ちょっと…」
精一杯ジャンプしても、体育館の窓枠に引っかかったバドミントンのシャトルには届かない。
これを片づけないと先輩に叱られる。
私は持っていたラケットで落とそうとしたけど、ムリだった。
「どけよ」
「え?」
その声にふり返った私の目の前を、何かが横切る。
ヒラリと軽くジャンプして、私が必死で落とそうとしていたシャトルをあっさり取った男子生徒。
「チビだな、青木は」
ニヤリと笑う彼は幼なじみの赤井。昔から私をチビチビとからかう。
「うるさいわね!私だって成長期なんだから、オトナになる頃にはアンタより背が伸びるかもよ?」
赤井からシャトルを乱暴に受け取って、道具入れにしまった。
いつも、背伸びしても消せない黒板の字を消してくれたり、ロッカーの上の替えモップを取ってくれたりしてるけど、いつかは逆に私が見返してやるんだから!
「そのままでいろよ」
道具を部室へ運ぼうと立ち上がった私に赤井の声が届いた。
「オレが、何度でも助けてやるから…オレより小さいままでいろよ」
「え?」
私が聞き返そうとふり返った時、赤井は耳まで真っ赤にして背中を向けてしまった。
うん…
このままでいるね。
あなたに、いつまでも助けてもらえるように。
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