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顔から途切れる事無く雨粒が流れ落ちる。不快感すらもう無い。有るのは激しい悲しみだけだ。
この雨粒はキミの為に泣いてくれているのだろうか。雨音に掻き消される僕の悲痛な声。それでも僕は激しく叫んだ。雨音よりも悲しく、遮断機の警報音なんかよりも激しく。
でも一番届けたかった人には、もう二度と届かない僕の声。悲しみに震える僕の拳だけが、遮断機の警告灯に照らされ、無情にも無慈悲な世界に浮き彫りになり、気付かれてしまたのだ。
ずぶ濡れになって重くなった服。まるで心に足枷をされたようだった。僕の脚は二度と駆け出せなくなっていた。
吐かれる白い息に冷え込んだ体。でも僕の掌は冬の切り裂く冷気なんかより冷たく、まるで精巧に作られた無機質の人形のようなキミの感触をこの掌は未だに覚えている。
僕は天を激しく睨み付け叫んだ。喉が切れ、血が滲む味がするほど。でも僕の声は走り去る電車の騒音に掻き消され、空の高みで見物をしている誰かさんには届きはしなかった。
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