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       ☆  自宅のアパートに着くころには、激しく降り続けていた雨は、純白無垢の白銀の世界に変えようと、天から真綿の様な雪が音も無く静かに降り始めていた。  地面に降り積もった雪に光が反射し、空を明るくさせる。この白い雪が僕の心なら、こんなにも美しく輝きはしないだろう。きっと僕の掌は触れた物全てを黒く汚してしまうほど穢れきっているから。  僕は掌を前に出し、静かに降る雪を一欠片握りしめてみた。こんなにも美しい雪なら僕の心を少しは浄化してくれるような気がしたのだ。  天文学的な数の中から選び取った、一欠片の雪の結晶。まるで僕と君の様に儚かった。僕の掌に触れた瞬間に溶けてしまい、美しさを損ねてしまったのだから。  僕は何を求めているのだろう。失った時間と命の輝きは二度と戻らない事ぐらい理解している。でも、僕はあの瞬間に戻りたかった。君と笑ったり泣いたり怒ったりした、あの眩しい瞬間に。  美しい冬の棘に身を振るわせながら、君との思い出だけが詰まったカラっぽの部屋に入ったのだ。
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