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安さだけが売りの、差ほど美味しくないハンバーガーにかぶりつく。いつの時代でもパテはモサモサしていて食感は悪い。良く言えば、いつの時代でも変わらない味を保ち続け、尚且つ低所得者の財布のお友達である事ぐらいだ。人の味覚は小さい頃に口にした物を欲する物だ。それだけこの店の味が庶民の記憶に刷り込まれているという事だろう。僕も立派な低所得者の一員って事に泣けてきた。
薄く流れる、BGMを聴きながら、残り半分になったアイスコーヒーに口を付ける。俯いて携帯を弄っていても楽しい事などない。常に小さい画面を覗き込む為に俯いている現代人。はっきり言って病気だ。
僕は溜め息を吐きながら視線を戻すと誰かが僕の名前を呼んだのだ。
僕は慌てて振り返り、辺りを見渡す。するとそこには高校時代同じクラスだった西山元木がトレーに二人分の夏のイチ押しセットを乗せて立っていたのだ。
「昭彦、久しぶり」
元木が陽気に挨拶をする。だけど僕は、こいつだけは一生会いたくないと思っていた。
元木はイケメンで顔は良い。しかも、その事を自覚している元木は女に対して手が早く、元木の毒牙に掛かっ多くの女の話しを僕は知っている。嫌気がさす。モテない僕の妬みで済むならまだ良かった。その毒牙に掛かった多くの女の中に、高校時代に付き合っていた僕の彼女、姫野梓も居たのだから憎しみも更に増す。
元木は僕の元カノを奪ったと言う事実は知らない様だった。本来なら交際中にこいつの毒牙に掛かり、僕をあっさり切り捨てた梓を憎むべきなのだろう。でも責任転換とは都合の良い物だ。人に奪われてしまうぐらいの隙がある自分であったり、表面的な魅力に騙され、彼氏捨てた元カノの梓ではなく、奪った元木に向かったのだから。
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